ある日系人青年の死②

私は外国人留学生が日本に来る手伝いをしたり、日本語学校で働いていたことがある。その結果の私見では、外国人が日本に馴染めるかどうかは、条件によって非常に差がある。



夫婦や家族で移住した人、母国人との人間関係が主な人ほど馴染めていない観がある。それに、年齢。
年齢が上になるほど馴染みにくい。それでも就職で来たなら企業のフォローもあるだろうが。



小杉氏が来日したのは15歳だった。子供としては、既に異文化に馴染みやすい年齢ではない。しかもインターでもない普通の公立中の12~3歳のクラスに入れられていたわけだ。



見た目も年齢差がある上に、年上なのに他の子供より拙い日本語というのは、彼もやりにくかったのではないだろうか。



時折弟が彼を家に連れてきたが、私と同世代か少し上に見えるだけに、他の弟の友人に対するように気さくに声はかけられなかった。今はそれで良かったと思っている。年下扱いは彼のプライドを傷つけただろうから。


偶々目にした彼のノートは整然とまとめられ、本来は学業がある程度優秀であることを感じさせた。



しかし、高等専門学校に行って、父親のようにエンジニアになりたいという彼の夢は叶わなかった。



来日後2年経ち日常会話には不自由しなかったが、受験に必要な国語や、理数系科目でも文章題は不得手なままで、高専の受験に耐えうるほどには学力は上がらなかったからだ。



結局彼は、17歳の時に近所の公立高校に進学した。その頃から、彼の人生のボタンは少しずつかけちがい始めていた。(続く)