ある日系人青年の死①

先日、数年ぶりに、上京してきた弟に再会した。



神奈川県某所の海近くのレストランで食事をしている時、彼はボソッと「そういえば、今日は小杉さんの命日だった。来週あたりお墓参りに行こうかな」と呟いた。



ケーン・小杉氏(仮名)は私と同じ年齢で、1990年代後半、中学生の頃に家族とブラジルから日本に移住(日系なので帰国と言うべきか?)した男性だった。



近所に住み、同年齢とはいえ私とはほとんど接点がない。移住した当初の彼は日本語の読み書きが出来なかったため、数歳下の私の弟と同じ学年に編入していたからだ。弟とはわりと仲が良く、何度か家に遊びに来ていた。



私🐷「いつ亡くなったの?まだ30代でしょう?事故か何かで……?」



弟👨「2年前に、肝硬変だったかな。若い頃は普通に生活してたんだけど、この10年は周りが心配する位お酒を飲んでいたんですよ」



直接親しくないとは言え、何度か顔を合わせていて弟もよく話題にしていた人の死は衝撃である。私は茫然としながら、「奥さんやお子さんは……」と言葉をつないだ。



弟👨「いや、彼は独身でした。付き合ってる女性がいるって話もあんまり聞いたことがない。いたら違ったかも知れないな」



意外な気がした。彼は仮名に使った俳優に似た、男らしく整った顔立ちだったし、家族を大事にしていて早婚しそうなタイプに思えた。



私は話題を変えて雑談を続けながら、ひそかに彼の人生に思いを馳せた。(続く)